センセイの鞄

 川上弘美センセイの鞄を読んだ。作品全体に彼女の作品らしい擬音語、擬態語が散りばめられていて、独特の雰囲気をかもし出している。
 物語の主人公であるツキコさんは高校で国語を教わった「センセイ」とサトルさんの店で再会することによって、心の中の何かが決定的に不可逆的に変わってしまう。センセイという存在がツキコさんにとって、かけがえのないものになっていく(なっていくという言葉は語弊があるかもしれない。何か分からないきっかけで「フッ」と変わってしまう感じ)。
 そんな様子、心模様、を難しいレトリックを排した、川上弘美らしい乾いた文章で綴っている。物語世界に浸れることができた。

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイの鞄 (文春文庫)