スロウトレイン

 TBS新春スペシャルドラマ、野木亜紀子脚本、土井裕泰演出、スロウトレイン。正月のお茶の間向けのみんなで観るドラマとしてつくられているのだろうから、これはこれでいいんだろうな。
 大前提として、面白いし、よくできているし、正しい。それを前提としていくつか記しておきたい。

  • 女女男というきょうだい構成の作為性、どうしても長子を女にしないと権力勾配的に正しくないんだろうな的な作為性を勘ぐってしまう。誰が食事をつくるかの描写や、口論の中での権力勾配を均すために、女女男である必要があったのだろうな、的な。
  • 正しさから、まあ男なんだろうなとわかってしまうところ。それは野木亜紀子もわかっていて、もう1段仕掛けてきたのでやられた!とは思ったが。
  • 坂元裕二・生方美久のやろうとしていることとの対比、他人の受け売りだが(おそらく宇野常寛だろう)坂元裕二・生方美久は、家族でない集団を模索してきていると理解していて、それはある種現代的な包摂を語るうえで極めて興味深いと思っているが、野木亜紀子(少なくともこのドラマに関しては)は家族万歳でしかなく、その点で物足りない。古舘寛治のバーがちょっとした居場所として描かれるが、仕事の関係であるし、家族の代替とはいいがたいだろう。

 いや、だがしかし、贅沢な出演陣の顔芸やチャーミングさが素晴らしい。松たか子の怒った顔、松たか子の所帯じみたしぐさ、東京03飯塚・タモリ俱楽部空耳俳優・宇野祥平の3段畳みかけ、多部未華子の隠しきれない品の良さ、などなど説教くさい路線の話のイマイチさを補って余りある魅力を感じた。
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