あいちトリエンナーレ名古屋地区

 岡崎・豊橋はこの前行ったので、今回はあいちトリエンナーレ名古屋地区へ。名古屋市美術館以外の愛知県美術館・栄会場・長者町会場を訪れた。
 愛知県美術館、10F入口にパンフの表紙にもなっているジェリー・グレッツィンガーの想像上の都市の地図が展示されている。大きさには心動かされるものがあるものの、作りこみであったり親しみであったりは空想地図(タモリ倶楽部にも1度取り上げられた)のほうが質が高いと感じた。

みんなの空想地図

みんなの空想地図

 最も気に入ったのは、クリス・ワトソンの作品。各地の波の音に耳を傾け、海でつながった世界に思いをはせる時間はなかなかに優雅なものだった。
 栄会場・長者町会場は全体として小粒な作品が多く、あまり興味をひかなかった。15分入れ替え制で鑑賞できる、損ジャ名古屋ビルの大巻伸嗣の作品は、強制的に15分を奪われ眠気を誘うものの、これもまたこういう美術展ならではの楽しみと思った。
あいちトリエンナーレ2016

しろいろの街の、その骨の体温の

 村田沙耶香の“しろいろの街の、その骨の体温の”。

  女子中学生が、言葉と、そして言葉で表現しきれないものと、を知る話。

 解説で西加奈子が書いているように、作家の言葉や世界に対する誠実さが滲み出ている。

 

あいちトリエンナーレ

 あいちトリエンナーレの岡崎地区・豊橋地区をぶらついた(名古屋は今度にした)。
 こんなことでもなければ、岡崎や豊橋をわざわざ訪れ、歩き回ることはなかっただろう。
 実際に街に住む住人が諸手を挙げて参加をしているかというと、そうではないが、かつての横浜トリエンナーレくらいの勢いは感じた。
あいちトリエンナーレ2016

ヤンヤン 夏の想い出

 エドワード・ヤンヤンヤン。DVDで。

 こんなに奥行きがある映画だった記憶がなく、3時間の豊かな映画体験を楽しめた。結婚式に始まり、葬式に終わる。映し出される画面の構図も垂直と水平が多く、かっちりした印象を強く持った。

 仕事の先行きが怪しくなり、かつての恋人との再会に揺れる父、NJ。繰り返す日々に行き詰まりを覚え、宗教に救いを求める母、ミンミン。まじめであるがゆえに、自責の念に囚われ、また恋に悩む姉ティンティン。体が小さく同級生の女の子にからかわれ、また素直であるがゆえに大人と多少の軋轢を抱える弟ヤンヤン。この4人の家族を中心とした群像劇。イッセー尾形演じる大田が悟ったような言葉と共に、NJに示唆を与えるのだけど、それは観客にも届く。

 歳を重ね、経験が増えていくにつれて、映画におけるフックにたくさんかかり、より深く楽しめるそういう作りになっていると思う。

 8年ぶりに観たようだけど、我ながらいいシーンの記憶を持っていた。

父親ウィラポンみたいな顔、ヤンヤンが女の子に対して抱くまだ形を持たない感情、シェリーが泣くホテルの窓に反射する東京タワー、イッセー尾形演じる大田と父親との何にも担保されていないのに厚い信頼、姉ティンティンがときめきながら着たドレス姿

creep.hatenadiary.jp

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

 

 

恐怖分子

 エドワード・ヤン監督の恐怖分子。DVDで。

 台湾のじっとり粘り着く暑さの中、カメラマンの少年(兵役直前)、ハーフの不良少女(美人局もする)、医師と小説家の夫婦を中心に、少年の彼女、少女の母、少女の悪友、病院の人々、医師と旧友の警部、小説家の元彼がそれぞれに動きながら、不穏な空気の圧が高まっていくのを観客は眺めている。

  書けずに悩んでいた小説家が殻を破った受賞作と現実との相似性から、実際に不幸がしみのように広がっていき現実となる。2つのパラレルワールドが描かれ(現実は後者だろうが)、観客の予想を裏切らずに、筋書き通りに終わる。

 隠喩的な風景、小道具、そして必要最小限の台詞、スクリーン越しに伝わってくる逃げられない暑さ湿気、すべてがラストに集約されていくような、そういう悲劇。

恐怖分子 デジタルリマスター版 [DVD]

恐怖分子 デジタルリマスター版 [DVD]

 

 

 

ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ

 黒川幸則監督ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ。新宿ケイズシネマにて。

 ツアー中のバンドマン中西(主人公)が移動中の車から追い出されたところは、生きるものと生きていないものが同じような姿をして入り交じって暮らしているところだった。

 誰が生きるもので、誰が生きていないものなのか、不確かなところも残されていて、ふわふわとつかみどころがない思いを抱きながら観ることになる。その街の空気も緩んでおり、中西は居所を提供してくれた古賀さんといつも酒を飲みながらいつも煙草を吸いながらダラダラと時を過ごす。

 とはいえ、ゆるゆる世界にも問題は転がっており、生きていないものの暴力性が露見することもある。中西は何度か命を狙われたりもする。

 ざらざらしたノイズミュージックとともに、暴力の塊も突きつけられるのだけど、でも、のんきな映画でほほえみながら観ることのできる、そんな映画だった。

  • 生きていないもの対策的に、赤い水を撒くこと
  • Macbook airをずっといじっている人ともう一人は生きている人なのか
  • 古賀さんは生きているのか(一度中西の呼びかけが聞こえないことがあった)
  • 中西はどう取り返しがつかなくなってしまったのか

など、その世界のルールが読みとれなくて、ふわふわした気持ちで観たのだった。

映画『VILLAGE ON THE VILLAGE』公式サイトwww.villageon.ooo

ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ | ケイズシネマ

 上映後のトークで、黒川監督、ゲスト太田信吾監督、近藤さん役佐伯美波が語らっていたのだけど、黒川監督が細かな整合性はある程度捨てて、むしろこれこそが映画なんだ的力強さを大事にした旨語っていた。

 そして偽日記に書いてあったとおり、プロダクション・ノートが非常に興味深い。

プロダクション・ノート | 映画『VILLAGE ON THE VILLAGE』

シン・ゴジラ

 庵野・樋口のシン・ゴジラ。映画館で。
 掛け値なしに名作。絶対に観るべき。なんなら何度か映画館に足を運んでもいいとすら思っている。劇中、中盤から涙なしには観られなかった。それは、スクリーンに映し出されたものが、私に地震を、津波を、原発の水素爆発を、思い出させたから。そして、こんなに素晴らしい映画を、しかも邦画を、観ることができるとは思っていなかった事前の予想をはるかに上回ってくれたから。そして、監督はじめスタッフ、長谷川博己はじめ出演陣、すべての苦労が報われた瞬間を見たから。
 言わずと知れたゴジラ。その現代版。もしくは震災後版。“想定外”の出来事が起こった時に、日本がどう対処するのかという危機管理のケーススタディになりうる、右にも左にも強烈に皮肉を浴びせる物語を、いい塩梅のグロさで造形されたゴジラと若き政治家との戦いに託して描く。
www.shin-godzilla.jp

岸辺の旅

 黒沢清の岸辺の旅。DVDで。
 ゆるくて、ぬるくて、ちょっと観たいものとは違った。
 

岸辺の旅 [DVD]

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地獄のガールフレンド

 鳥飼茜の地獄のガールフレンド。Kindleにて。
 女性性を避けずに扱っているし、女性の弱さこそが強さ的なしたたかさも隠すことなく描かれる。先生の白い嘘がいたたまれないので、こっちの方がずっとこころ暖まるわ。
東京タラレバ娘とかこれとか、女性作家の漫画って教育効果高いよね。

地獄のガールフレンド(1) (FEEL COMICS swing)

地獄のガールフレンド(1) (FEEL COMICS swing)

地獄のガールフレンド 2 (フィールコミックスFCswing)

地獄のガールフレンド 2 (フィールコミックスFCswing)

 よくわかんないんだけど、不倫に身を捧げる女の人ってそんなに多いの?周りからも聞くけど、私の身の回りだけでなかったのかしら。