虚構の内に虚構があり、その虚構の内にさらに虚構があるという層的な世界の中で、その階層間を行き来する登場人物たち。そして、この現実世界から虚構内へと引きづられ、物語中に登場させられた人々。読者は投書やパソコン通信(今のタームだと何?)によってこの物語の成立の現場に参加し、
興味深いのと直感的に面白いのとには歴然とした差があって、これは知的に興味深いのだが、中盤で幾分間延びし、直感的に面白みに欠けた(終盤はリズムよく話が進んでひたすら面白いのだけど。というか、もともと新聞連載小説だったものを、単行本化、文庫本化されたものを読んで云々するのは方法論的に違うのかもしれないが)と思うし、筒井は知的好奇心の塊みたいな作家だから、そこのところを勘違いしている気はするのだけれど、じゃあ、直感的な面白さとは何だと問われて、回答に窮するわけで、簡単にはいかない。でも、確実に僕個人の中では文学部唯野教授もこの小説も知的に興味深いが、文学部唯野教授の方が直感的に面白いわけで。
こういう教養小説とでもいった代物を読むと、教養があった方が物事を楽しめるような気もするし、でも一方教養で直感的な世界を閉ざされてしまう気もするし。
いまいち自分が何を書きたいのかわからない。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/07
- メディア: 文庫
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