父と暮せば

 抑制や無音や間の力を感じた。
 もともと2人での芝居とはいえ、ほぼ2人でこんなにも豊かな世界が創れるという単純な驚きを感じながら、というのは嘘で、ずっと宮沢りえ原田芳雄広島弁の会話に聞き入っていて、ただ物語の進むに任せて一喜一憂していた。観客を飲み込む世界を持った、優れた作品だと感じた。
 やはり人間一人一人にドラマはあるわけで、原爆はそれを全て無差別に焼いた。これは昔の話ではなくて、今現在でも、この同じ星の上で未だに戦争は存在している。ただ、この国から直接見えるところでないだけで、少し想像力をはたらかせれば、何が起こっているのか想像するのは容易い。ただ、僕らは美津江のように自分を責めるすべさえ知らない。
 あえて難点を挙げれば、やはり稚拙なCGが……。観客の想像力に任せた方が良かったと思う。あれはさすがに演出の失敗でしょうな。

父と暮せば 通常版 [DVD]

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