東京国立近代美術館

 時間に空きがあったので、当てもないまま皇居の周りを散歩していたら、あったので入ってみた。柳宗理のプロダクトデザイン展はまあ、どこのこじゃれた雑貨屋にでも売ってるようなベタなものしかないわけで、特に目新しかったりすることがなかったが、都路華香展というのが催されていて、それが結構良かった。
 僕は結構正当派な芸術というものがあまりよくわかっていない人間で、いいデッサンと悪いデッサンなんて、ある程度のレベルになったらぜんぜん見分けがつかないような感じだけれども、恥ずかしながら存じ上げなかった都路華香の絵の、「水」の表現が素晴らしいと思った。
 絵を描くということはデフォルメすることであり、写真とはまた違った種類のフィクションが立ち上がるわけだけども、実際の水面に比べて絵の水面の情報は圧倒的に少ないはずなのに、なぜか僕の記憶の中にある実際の水面を見たものよりも絵の水面の方が豊かだった。墨を始めとする水彩色一色の濃淡のみで表される水面のシンプルで美しいことはフィクションの力を示すに十分な強度を持っていた。
 大観の絵巻物は眠かったのでちょっと記憶に薄いのだが、日本の近現代史を美術で追う企画展は結構面白かった。やっぱり荒川修作草間弥生から今に至る現代芸術がただ単純に好みなんだなと確認した。
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