ゾウの時間 ネズミの時間

 本川達雄著のゾウの時間 ネズミの時間を読んだ。動物生理学の視点、特に「動物のサイズ」というものさしで、さまざまの動物の生態の不思議から、ひいては時間空間の概念まで論じてしまおうという、よく言えばスケールのでかい、悪く言えばかなり傲慢な本である。
 著者は科学雑誌にも寄稿したりしている有名な学者であり、「動物のサイズ」でたくさんのことを説明してしまおうという試みもおもしろく、一般の読者にもとっつきやすいように(新書だから当然といえば当然)簡単に書いてあるので、楽に最後まで読むことができる。おもしろくするために、著者自身も論が強引であることを納得の上に書いているので、ところどころで「断っておくが・・・」などとあるのがちょっとわずらわしいが、なるほどと、うなずけるところをたくさん持っている本だ。
 この本では、時間というものは、動物の体重の1/4乗に、体長の3/4乗に比例すると述べられている。読めばなるほどとうなづけるだけの理由もある。これを知るだけで世界の捉え方が変わるだろう。この本はそういう可能性を持っている本である。
 この本を読みながら、時間という概念を全く別の視点から考えるのも楽しいものである。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)