おめでとう

 川上弘美のおめでとうを読んだ。小説を読む意味というか、わけというか、そういうものを感じた。
 ひらがなカタカナ漢字を巧みに使い綴られていく文章はこの上なくぶっきらぼうで淡白で、とつとつと語られるのだが、男女の心の綾をうまく捉えている。僕が今まで見えてこなかったり、感じ損ねてきたものが言語化されて、提示されていた。つまり哀しくなった。切なくなった。登場人物をタマヨさんとか私とか恋人とか匿名性の高い言葉で示し、ストーリーもあるようなないような感じで語られるので、ものすごく普遍性が高く、誰もが自分を登場人物に当てはめることができ、ふっとうれしくなったり、かなしくなったりする。最終的にはものすごく切ない気持ちに陥ってしまえる短編集だろう。

おめでとう (新潮文庫)

おめでとう (新潮文庫)