ケス

　これぞケン・ローチというような作品。生まれたときから運命が決められているという状況もあるのだ。その厳しさをのどかなBGMが強調する。撮ったのでなく撮れてしまったかのような自然な映像の連続。ドキュメンタリーのように編集された作品。
　切ない物語で希望を失ってラストを迎えるのだが、いくつも美しい印象的な場面があった。学校でいつもつまらなそうに過ごしているビリーが授業中にケスの調教について熱く語っている時の雄弁な様。画面の上部3分の1に街が追いやられ、下部3分の2に広がる芝生でビリーとケスが戯れっている心が洗われるようなショット。この他にもいくつか素晴らしい映像があった。
　空を自由に優雅に飛びまわるケスと、地面に縛られ家族や金銭に悩まされるビリーの対比がなんとも切ない。

ケス【字幕版】 [VHS]