大人は判ってくれない

 言わずと知れたトリュフォーの最も有名な作品であり長編デビュー作。まあ初めて観たんだけど。
 すげえ、という感じではなくて、むしろ冒頭のモノクロ画像+ゆるーい音楽で小津?って思ったくらいなんだけど、観ながら考えることはたくさんあって、まず、主人公の少年はタイプライターを盗んだことで鑑別所に送られてしまうんだけども、それまでの過程を含めて彼を見た場合、彼は大して不良少年ではない気がする。学校の同じクラスの少年たちとほとんど変わらない、ただの少年に見える。まあそれが悲劇かもしれないけれども。彼を比較対象としてみたときの自分の汚さ、これが強く訴えてくるストーリーだった。個人的には。
 で、この映画は主人公のアントワーヌ少年を追い続けるし、彼の心象を描写し続けるのだけれども、その心象ってやつが、僕にとって共感しつつも、ある距離を置いて感じるもの、わずかながら距離を感じるものだった。思い出せば(この思い出すってやつが既に距離なんだけど)、両親、教師という大人なんて何にもわかってくれないという感情は記憶の引き出しに確実に存在してるし、自分たち=子供vs.両親、教師=大人といった構図は間違いなく、僕の歴史の中にあった。けども、気づかないうちにそれほどわかりやすい物ではなくなっているし、むしろ自分が大人と言われてもおかしくない立場にいることに愕然とした。距離を感じることで、自分はアントワーヌと寸分違わぬ心地ではないのだという事実にある種の切なさを感じた。
 俺は何歳だ?

あこがれ・大人は判ってくれない〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選1〕 [DVD]

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