リズと青い鳥

 山田尚子監督、リズと青い鳥Netflixにて。
 彼女たちのまなざしにて、北村匡平がこれまた魅力的に演出を取り上げていたので、気になってみた。冒頭5分ほどのシークエンスは素晴らしかった。ここだけで心動かされ、アニメーションという技法を自分が過小評価していたことを思い知らされた。(なぜならば、おそらくこれは実写では撮影できないから)

 一方で、宇野常寛が「終わった瞬間に、僕の心は超クールダウンしているわけ」とした意味もよくわかる。1カットで十分説明できている内容に2カット使用したり、説明過剰であると評されても文句は言えないだろう。私は元々ハードル低めで見たので、クールダウンまではしなかったけれど。
www.nicovideo.jp
 まあでも観てよかった。正直言ってアニメーションには明るくなく、時間があってアニメーションと実写映画があれば間違いなく実写を選ぶ質なので、彼女たちのまなざしには感謝したい。

うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美

 六本木は泉屋博古館東京にて。初めて行った。前の通りは通ったことあったけど。
 展示室4つのこじんまりとしたスペースで漆そのものの魅力というよりは螺鈿・蒔絵をメインに据えたような展示だった印象。個人的には「長寛好獅子唐草文 箔絵会席膳椀具」これが圧倒的に好み。甘美。
bijutsutecho.com
 詳しくないからわからないけど、照明でもっと官能的に見せられたんじゃないかなという気はする。また青木千絵の作品が観たい。
sen-oku.or.jp

理系人に役立つ科学哲学

 理系人に役立つ科学哲学。ごめんなさい。借りて読みました。半年くらいかけてゆっくりと。
 Amazonのレビューを見ると、懐疑的なレビューもあるのだけど、面白く読んだ。
 それ相応には工学を修め、その後も科学や工学にかかわる分野に携わって云十年だが、恥ずかしながら初めて科学哲学に触れた。これだけの歴史とこれだけの理論家たちが携わる総合的な分野だということも、恥ずかしながら初めて知った。
 「原因」であるとか「説明」であるとか、実験結果の解析解釈と共有時に日常的に用いる用語で何の疑問も差し挟まずに云十年使ってきたが、突き詰めると一つの考え方でまとめてしまえるものはないということが興味深かった。ある意味不安定な基盤をさも当たり前として科学が存在することに驚いた。
 直感的に違和感がないため、全く考えたこともなかったこの分野、末尾でお薦めされている文献を今後も読んでみたい。

江之浦測候所

 杉本博司設立の江之浦測候所。午後回で。

 海岸線からすぐに高台が立ち上がるような地形で鈍角の湾に面しており、(訪問日の天気が良かったこともあり)そもそも「いいところ」。みかん畑レモン畑が敷地内にあり、それも良い。そこに土地と縁もゆかりも無い時代もバラバラ土地もバラバラなものが、化石から現代芸術まで杉本博司の嗜好で設置配置されていて、最初の印象としてかなり悪く、いびつでグロテスクな印象を受けた。やはり縁もゆかりもないので、「用の美」的な美しさからほど遠いのがマイナスだったと思う。悪趣味と感じた。

 しかしながら1時間もその世界にいると、慣れもあるのか拒否感情が薄れ、また歩を進めみかん畑の坂道や竹林の小径を歩いてみると、むしろその人為的な数多の造作にもかかわらず、その造作を受け止めむしろ飲み込もうという自然の雄大さが強調されているように感じ、私としての面白がり方を掴んだ感はあった。

 あまり言語化できていない。

 歩きながら、今やしっくりきている体で日本社会に馴染んでいるが、初期の仏教もグロテスクと思われたのかな。明らかに浮いているお社に感じる圧倒的な違和感についても、今日本にあるいくつかの名刹については元々は極彩色立ったようだし。

https://www.odawara-af.com/ja/enoura/

すばらしき世界

 西川美和脚本・監督、すばらしき世界。Prime Videoで。
 冒頭淡々とした描写を終え、東京で弁護士家族、ディレクターと心通わせていく描写に、こっから下げてくるんだろうなと身構えイヤな気持ちになりながら観た。ほのぼの音楽まで流してたち悪いな、と(いずれも褒め言葉ですよ)。何度かある朗らかな音楽と心温まるエピソードに身構える。そして案の定な事件がいくつか起こる。内容の性質上、ハッピーエンドにはならないから、覚悟しては観進めるけども、心は映画にしっかりと振り回された。
 この映画の取り扱う社会問題については個人的には割と触れている社会問題ではあるのだけど、相似形の社会問題はいくつか思い浮かび、いずれにしても切り離して隔離してしまうのか、包摂していくのか。私自身、何か活動をしているわけではなく、心に重いものを残された。
 三上の気の短いところ、真っ直ぐで曲がったことが許せないところ、子どものころの毎日ケンカしていた頃を思い出して感極まってしまった。ケンカは弱くてよかった。

2023年読んだ本・観た映画・観たドラマ

 下記のように一覧にしてみると、振り返れてよいですね。結構いい歳になったので、これから死ぬまで習慣にしていきたい。こんなにも、時間が空いたら映画見るよりも展示を見に行くことを優先しているのは感覚的に理解はしていたものの、数的に見えて改めて理解した。
 今年は、今更ながら教養みたいなものへの興味が復活したこと、手を動かしてものつくってみたいなという気持ちが復活したこと、漆への興味が顕在化したこと、「日曜の夜くらいは」が初めの方観ていた時の興奮が終盤に進むにつれて惜しむ気持ちに変わっていったことが思い出されるトピックスだろうか。
 以下には記述していないが、2023年の私の可処分時間の多くは、ながらではあるがPodcast(OVER THE SUN、アフター6ジャンクション(2)、桃山商事の恋愛よももやまばなし、ニュースコネクト、荻上チキ・Session(22)、代官山ブックトラック、文化系トークラジオLifeフリーランスが学ぶ!企業社会の歩き方、速水健朗のこれはニュースではない)とPlanetsの各種コンテンツ(ニコニコ契約で触れられるコンテンツに限る)に取られています。
読んだ本(雑誌除く)

  1. 35歳からの反抗期入門 - 感想文未満の雑記帳
  2. 現代思想の教科書 - 感想文未満の雑記帳
  3. 誰もが時間を買っている―「お金」と「価値」と「満足」の社会経済学 - 感想文未満の雑記帳
  4. プリズナー・トレーニング - 感想文未満の雑記帳
  5. 暇と退屈の倫理学 - 感想文未満の雑記帳
  6. 掃除婦のための手引書 - 感想文未満の雑記帳
  7. 失敗の本質 - 感想文未満の雑記帳
  8. 大規模言語モデルは新たな知能か - 感想文未満の雑記帳
  9. なぜAppleは強いのか - 感想文未満の雑記帳
  10. 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! - 感想文未満の雑記帳
  11. 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる!《Part2》 - 感想文未満の雑記帳
  12. 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! 《Part3》 - 感想文未満の雑記帳
  13. 日常の絶景: 知ってる街の、知らない見方 - 感想文未満の雑記帳

観た映画(配信含む)

  1. あの子は貴族 - 感想文未満の雑記帳
  2. 天気の子 - 感想文未満の雑記帳
  3. 退屈な日々にさようならを - 感想文未満の雑記帳
  4. ちょっと思い出しただけ - 感想文未満の雑記帳
  5. 君たちはどう生きるか - 感想文未満の雑記帳

観た展示

  1. 中谷ミチコ: デコボコの舟 / すくう、すくう、すくう - 感想文未満の雑記帳
  2. 松江泰治写真展「ギャゼティアCC」 - 感想文未満の雑記帳
  3. 青木千絵 個展「沈静なる身体」 - 感想文未満の雑記帳
  4. 多層世界とリアリティのよりどころ - 感想文未満の雑記帳
  5. エゴン・シーレ展 - 感想文未満の雑記帳
  6. The Original - 感想文未満の雑記帳
  7. 東京国立博物館総合文化展 - 感想文未満の雑記帳
  8. へザウィック・スタジオ展:共感する建築 - 感想文未満の雑記帳
  9. ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会 - 感想文未満の雑記帳
  10. シスターフッド - 感想文未満の雑記帳
  11. 高田冬彦『Cut Pieces』 - 感想文未満の雑記帳
  12. 蓮沼執太 池谷陸 田中せり / unpeople - 感想文未満の雑記帳
  13. ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン - 感想文未満の雑記帳
  14. Maker Faire Tokyo 2023 - 感想文未満の雑記帳…展示なのかというところはあるが
  15. 倉俣史朗のデザイン ―記憶のなかの小宇宙 - 感想文未満の雑記帳

観たドラマ(記録に残していないので記憶に残っているもののみ)

  1. ブラッシュアップライフ
  2. 藤子・F・不二雄SF短編ドラマ
  3. 日曜の夜ぐらいは
  4. 季節のない街 - 感想文未満の雑記帳
  5. すべて忘れてしまうから - 感想文未満の雑記帳
  6. VIVANT
  7. ワカコ酒season7
  8. らんまん
  9. あまちゃん
  10. 日常の絶景
  11. おいしい給食season3
  12. たそがれ優作
  13. いちばんすきな花
  14. あれからどうした
  15. きのう何食べた? season2

倉俣史朗のデザイン ―記憶のなかの小宇宙

 倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙。世田谷美術館にて。
 今日観られる展示でなかなか興味を惹くものがなく、消去法的に。
 一応平日なのだけど、さすがは世田谷、結構人がいる。なんなら児童もいる。
 展示に対しての感想は、あっ確かにセンスいいな。美学を感じるな。と感じるものの、作品が心に引っかかってしまって心を捉えて離さない、みたいなのはないです。さらさらと1時間かからずに展示をなでるように眺めてきました。
www.setagayaartmuseum.or.jp

日常の絶景: 知ってる街の、知らない見方

 ドラマから興味がわき、原作というか元ネタ本。
 これは内容もさることながら、思想的に非常に親近感がわくし、同意できるところが多い。というかフォローしたい。
 あとがきまで読むと、この出版社も、編集者も、キーなのだなとわかり、時間のある時に調べてみたくなった。

「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! 《Part3》

 1、2に引き続き。回路図が読める書けるともっと面白いんだろうな。

「100円ショップ」のガジェットを分解してみる!《Part2》

 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる!《Part2》。part1に引き続き。