メタモルフォーゼの縁側

 漫画の方は面白かった記憶はあるのだけど、絵柄を検索してみるまで忘れるくらいだったけども、Amazon Prime Videoで。
 まあ、何と言っても芦田愛菜宮本信子が素晴らしい。(もしかすると偏見によるものだが、)芦田愛菜があか抜けない風体と表情をまとい、いかにもな振る舞いを見せるし、宮本信子も気のいい後期高齢者そのものを見せてくれる。
 素直にうらやましいと思える物語を後味良く観た。

 画面奥に向かうのが未来へポジティブ、画面手前に来るのが過去方向でネガティブと描かれていたと観ていたのだけど、サイン会の日、英莉ちゃんの見送りに紡とうららでトンネルの歩道を行くときだけ、手前にに走ってくるのをポジティブに描いていて、ちょっと混乱した。まだ解釈できていない。

9 Häuser

 大室佑介の9 Häuser。plateaubooksにて。
 私立大室美術館を何度か訪れているためか、googleか何かにrecommendされて訪問。
 (文化的な)書店の棚の一部にずらっとと、書棚にぽつぽつと、グレーのボール紙で作られた彼の設計したHausの模型が置かれていた。
 建築系の展示に行くと見ることのできる建築模型、結構好きなのだけど、今回の1mm厚程度のボール紙で作られた均整の取れた模型も独自の味があり、結構面白く観たし、3Dプリンタ等でこういう模型をつくるのも面白そうだなとアイデアをもらった気持ち。3D CADで描けるようになる必要があるが。。。
 とは言え、15分から20分程度で店を離れてしまったけれど。

www.instagram.com

第17回 shiseido art egg 第2期展 野村 在 展

 資生堂ギャラリーにて。事前に期待していたほどのインパクトは、私には残らなかった。下のインタビューは面白かった。
gallery.shiseido.com
hanatsubaki.shiseido.com

リズと青い鳥

 山田尚子監督、リズと青い鳥Netflixにて。
 彼女たちのまなざしにて、北村匡平がこれまた魅力的に演出を取り上げていたので、気になってみた。冒頭5分ほどのシークエンスは素晴らしかった。ここだけで心動かされ、アニメーションという技法を自分が過小評価していたことを思い知らされた。(なぜならば、おそらくこれは実写では撮影できないから)

 一方で、宇野常寛が「終わった瞬間に、僕の心は超クールダウンしているわけ」とした意味もよくわかる。1カットで十分説明できている内容に2カット使用したり、説明過剰であると評されても文句は言えないだろう。私は元々ハードル低めで見たので、クールダウンまではしなかったけれど。
www.nicovideo.jp
 まあでも観てよかった。正直言ってアニメーションには明るくなく、時間があってアニメーションと実写映画があれば間違いなく実写を選ぶ質なので、彼女たちのまなざしには感謝したい。

うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美

 六本木は泉屋博古館東京にて。初めて行った。前の通りは通ったことあったけど。
 展示室4つのこじんまりとしたスペースで漆そのものの魅力というよりは螺鈿・蒔絵をメインに据えたような展示だった印象。個人的には「長寛好獅子唐草文 箔絵会席膳椀具」これが圧倒的に好み。甘美。
bijutsutecho.com
 詳しくないからわからないけど、照明でもっと官能的に見せられたんじゃないかなという気はする。また青木千絵の作品が観たい。
sen-oku.or.jp

理系人に役立つ科学哲学

 理系人に役立つ科学哲学。ごめんなさい。借りて読みました。半年くらいかけてゆっくりと。
 Amazonのレビューを見ると、懐疑的なレビューもあるのだけど、面白く読んだ。
 それ相応には工学を修め、その後も科学や工学にかかわる分野に携わって云十年だが、恥ずかしながら初めて科学哲学に触れた。これだけの歴史とこれだけの理論家たちが携わる総合的な分野だということも、恥ずかしながら初めて知った。
 「原因」であるとか「説明」であるとか、実験結果の解析解釈と共有時に日常的に用いる用語で何の疑問も差し挟まずに云十年使ってきたが、突き詰めると一つの考え方でまとめてしまえるものはないということが興味深かった。ある意味不安定な基盤をさも当たり前として科学が存在することに驚いた。
 直感的に違和感がないため、全く考えたこともなかったこの分野、末尾でお薦めされている文献を今後も読んでみたい。

江之浦測候所

 杉本博司設立の江之浦測候所。午後回で。

 海岸線からすぐに高台が立ち上がるような地形で鈍角の湾に面しており、(訪問日の天気が良かったこともあり)そもそも「いいところ」。みかん畑レモン畑が敷地内にあり、それも良い。そこに土地と縁もゆかりも無い時代もバラバラ土地もバラバラなものが、化石から現代芸術まで杉本博司の嗜好で設置配置されていて、最初の印象としてかなり悪く、いびつでグロテスクな印象を受けた。やはり縁もゆかりもないので、「用の美」的な美しさからほど遠いのがマイナスだったと思う。悪趣味と感じた。

 しかしながら1時間もその世界にいると、慣れもあるのか拒否感情が薄れ、また歩を進めみかん畑の坂道や竹林の小径を歩いてみると、むしろその人為的な数多の造作にもかかわらず、その造作を受け止めむしろ飲み込もうという自然の雄大さが強調されているように感じ、私としての面白がり方を掴んだ感はあった。

 あまり言語化できていない。

 歩きながら、今やしっくりきている体で日本社会に馴染んでいるが、初期の仏教もグロテスクと思われたのかな。明らかに浮いているお社に感じる圧倒的な違和感についても、今日本にあるいくつかの名刹については元々は極彩色立ったようだし。

https://www.odawara-af.com/ja/enoura/

すばらしき世界

 西川美和脚本・監督、すばらしき世界。Prime Videoで。
 冒頭淡々とした描写を終え、東京で弁護士家族、ディレクターと心通わせていく描写に、こっから下げてくるんだろうなと身構えイヤな気持ちになりながら観た。ほのぼの音楽まで流してたち悪いな、と(いずれも褒め言葉ですよ)。何度かある朗らかな音楽と心温まるエピソードに身構える。そして案の定な事件がいくつか起こる。内容の性質上、ハッピーエンドにはならないから、覚悟しては観進めるけども、心は映画にしっかりと振り回された。
 この映画の取り扱う社会問題については個人的には割と触れている社会問題ではあるのだけど、相似形の社会問題はいくつか思い浮かび、いずれにしても切り離して隔離してしまうのか、包摂していくのか。私自身、何か活動をしているわけではなく、心に重いものを残された。
 三上の気の短いところ、真っ直ぐで曲がったことが許せないところ、子どものころの毎日ケンカしていた頃を思い出して感極まってしまった。ケンカは弱くてよかった。