わたしたちの家

 清原惟監督、わたしたちの家。映画ってなんだろう、そう思わせられる映画だった。
 玄関がシャッターである民家兼昭和のタバコ屋みたいな建物に住む①セリと桐子の親子、②さなと透子、のパラレルワールドを2つを交互に描いていく。

  • スクリーンに映し出される画の構図
  • 座る位置など、その世界の中での座標

が意味深で、過去に観た映画を思い出させる。
 この映画はその世界をただ、描き出して、ちょっと2つの世界をつなげて、上映が終わる。描かれる2つの映画世界において、基本的に何も明らかにされない。
 清原監督は、映画技術をよく勉強していると思う。映画を観てきた人が観客となった際に、こころくすぐられるような要素を各所に散りばめている。でも、だから何?というのが正直な感想。世界が閉じていて、私に訴えてくるものは特に感じなかった。監督の、世界に対する態度表明としても、特に何も表象されていないでしょう。透子に象徴される日常の繰り返しを積極的に肯定しているようにも見えない。
 また、あくまでも2つのパラレルワールドはどちらが主で残りが従でというわけではないと思うのだが、セリがクリスマスツリーを地面に挿して電飾が点くシーンによって、①セリと桐子の世界が世界と信頼性を失い夢の世界のように捉えられてしまう訳だが、それはおそらく作り手の意図に沿ったものではないだろう。
 そして、知りたいと思う謎が食卓における座る位置である。あの家の食卓における上座を、映画の前半ではセリと透子がそれぞれの世界において定位置としていたことに意味はあるのか、後半で透子の座る位置が変わったことに意味はあるのか、それが知りたい。
 大学院修士課程の制作作品としては、実にすばらしいと思う。でも、それで1800円をとって見せるに値するかというと、個人的にはどうかなと思う。
 日本家屋ってこんなに直線で構成されていたのかと思い出さされた。そういう機能的な面では、語るべきところの多い映像であった。
清原惟監督作品 『わたしたちの家』
www.eurospace.co.jp
youtu.be

モダニストの日本美―石元泰博「桂」の系譜

 三重県立美術館にて、モダニストの日本美―石元泰博「桂」の系譜。
 モダニズム建築という波が西欧にて巻き起こった一方、そのエッセンスがすでに近世日本建築(特に桂離宮)に存在していることが発見された。その一通りの流れを、画家三好好太郎の作品から始め、石元泰博の写真に到達するという展示によって、追体験しようという試み。
 彼らが日本的美であるとかモダニズム的に美と定義したものは、主に直線で構成され(建築だから当たり前?)、原則対称性の極めて高い形状(展示されている写真も等角図を意識したのか、写真の底辺からの構造の角度が30度のものが多い)なんだけども、“遊び”として若干対称性を崩す(石のような天然物の形状や、格子を増やしたり減らしたり)というものと感じた。言語化するのは難しいのだけど、直感的にはよくわかる。
 最も印象に残ったのは、丹下との論争の中に出現した、岡本太郎であった。
 館長さんが三好好太郎マニアなのかな?恥ずかしながら本展にて初めて知りました。
三重県立美術館 モダニストの日本美―石元泰博「桂」の系譜

リボーンアート・フェスティバル 東京展

 ワタリウム美術館で。やっぱりぐっとくるものがある。
 島袋道浩の作品、「起こす」の方はふーんと思っただけだったのだけど、「起きる」の方を見て、泣きそうになった。「起こす」は島袋らが浜辺に横たわっている木や石を立てたインスタレーション。「起きる」の方は津波になぎ倒された若木が、90度に幹を曲げて伸びている作品。
 もう一つ、金氏徹平のWhite Discharge(建物のようにつみあげたもの/石巻)。私くらい歳を取ってくると、積み上げられた材料たちの持っている(持っていた?)物語に思いを馳せてしまう。感極まってしまうよ。
リボーンアート・フェスティバル東京展、reborn art festivalin Tokyo

世界にひとつのプレイブック

 世界にひとつのプレイブックを一人寂しく観直してみたのですが、脚本けっこう狂ってんな。いや、好きなんだけど。褒めているんだけど。でも、プロットが結構むちゃくちゃだわ(笑)

 なんでこの時べた褒めだったんだろう(笑)
creep.hatenadiary.jp

剥き出しにっぽん

 石井裕也監督の大阪芸大卒業制作作品、剥き出しにっぽん。DVDで。
 これはなかなかすごい。中盤から最後まで、グダる感は否めないのだけど、導入から話の展開までは、俊逸に面白い(学生映画としてはかもしれないけども)。
 男子高校生的なホモソーシャルなネタ感と、謎に背中から尻までのサービスショットまで、(学生時代の)石井裕也の考える「映画の面白さ」が90分に詰まっている。
 セリフの録音はかなり小さいので、DVD化するときにどうにかならなかったのかしらとは思う。
反逆次郎の恋に繋がるモチーフ(なんか知らないけど同棲しちゃうとか、宇宙に対する態度とか)がちょいちょい出てきて、反逆次郎の恋の理解度向上にも貢献した。

剥き出しにっぽん [DVD]

剥き出しにっぽん [DVD]

東京の恋人

 笠井爾示写真展を渋谷ヒカリエ8階にて。写真って、もはやプロでもそこそこの光沢紙にインクジェットでプリントアウトして作品にする昨今、プロの撮る写真とはいったい何なのか、考えさせられた。解像度ではない。
www.hikarie8.com

硝子の葦

 WOWOWのドラマ、三島有紀子監督、プライムビデオで。全4話。
 1話目、辛かった。誰にも感情移入できない。世界が釧璃(釧路のもじり)に閉じている。グロい。本当に2話目を観るべきか迷った。半分以上惰性で2話目を観た。素晴らしかった。
 相武紗季演じる主人公、節子が、初めて笑った。世界の景色が明るくなった。閉じた世界が、人間の内側に開いていった。普遍性を持つ物語に転化されていった。

 正直プロットを思い出してみると、2時間不要で90分でまとめられる内容のように思う。それを4時間たっぷり使って風景の描写を差し挟みながら描き出した。でも、それだけの価値はあったように思う。
 1話目は恋の渦の冒頭30分並みに辛いのだけど、2話目以降花開くので、ぜひぜひ観てみるべきと思う。ググってみても全然、批評・レビューの類がない。正直観られていないドラマなのだろう。でも、三島有紀子渾身の一作なんじゃないかと思う。
 
 3話目、部屋の家具の位置が変わっていることに気づいたあなた、鋭いです。それくらい鋭い人には、4話目の描写はくどいですね。説明過剰に感じると思います。私は、ラストから2番目のシークエンスは、タバコの持ち方だけで説明するのが乙だと思います。ピアスは過剰。

の・ようなもの

 森田芳光監督、の・ようなもの。プライムビデオで。
 二ツ目の志ん魚がソープ(81年の作品なのでトルコ風呂)行って姫と仲良くなったり、高校に落語講師として関わるうちに女子高生とつき合ったり、そのくせ噺がおもしろくなくて行き詰まりを感じたり、そんな姿を描き出す。まあ、プロットが特におもしろくないので、そこの点では見る価値はないだろう。
 この映画の現代における価値は、間違いなく、80年代当初の風俗(性風俗だけでなく)が切り取られ、映し出されていること。主に男性文化のみですが。

の・ようなもの [DVD]

の・ようなもの [DVD]

レアンドロ・エルリッヒ展

 森美術館。これは、、、おもしろくなかった。
 もともと「なるほど」の種明かしな作家で、即物的なことを批判してもしょうがないんだけど、それにしても思想的な深みが薄すぎませんかという印象を持った。個展の割に作品数が少ないせいかもしれませんが。(まあ展示が場所を取る作家なのでしょうがないとも言えるんでしょう)
 現代アートの入り口にはいいのかもしれないけれども、「インスタ映えするでしょうね」以上の感想が浮かんでこない。そんな展示。
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www.mori.art.museum

装飾は流転する

 東京都庭園美術館で。装飾とは?という問いに作品でもって答える企画。これはなかなかにフェティッシュで興味深かった。
 ヴィム・デルヴォワのSUS板をレーザーで鋭角に繊細に切り抜いたものを組み立てた一連の作品群に特に興味を持った。特にトレーラーはタイヤが回転するように製作されていたので、動くところを見たかったというのが正直なところ。
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 また、高田安規子・政子による作品で、樹脂吸盤の彫刻やトラップに刺繍を施した作品もきわめてフェティッシュで心をくすぐられた。
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www.teien-art-museum.ne.jp