アメリ

 登場人物が大人で設定も世界も大人のもので、中身は絵本、画も絵本という物語。つまり大人の絵本。後から振り返れば簡単に要約できてしまうような映画で、つまらなそうに書けてしまうけども、作品自身は上手くできていて、足早に進むリズムと膨らむ妄想、いびつな人間たちの掛け合いが連なっていて、あれよあれよと言う間に最後まで観せられてしまう。いわゆるいい話だから、根本的に性格の悪い人には絶対受け入れられないだろう。きっとジャン=ピエール・ジュネはいいやつなんだろう。こういう映画があってもいいなという印象を持った。こういう妄想に突き進む自己中心的な物語でサブカル的な色合いを持つようなものを、ヴィヴィッドな色彩とおしゃれな世界で観れてしまうものに仕上げるってのは日本映画やアメリカ映画には無理なんだろうなと思いつつ、そんなに世の中甘くないよと突っ込みたいが、これは絵本、構わない。実際、観ている時はこういう悪意ある解釈をさせない「いい話」になっているわけで(僕はそう思った)。
 人物をフレームに収めるときに、センターを外して、何かと向かい合っているようなショットが多かった印象だけど、自分ひとりの妄想の世界の住人をそれで撮っていいのかと思ったり、向かい合っているものが人ではなくモノだからいいんじゃないのと思ったりした。なんにせよ、これを観て幸せな気分になる人がいるならそれをどうこう言うつもりはない。
 そしてオドレイ・トトゥに触れないわけにはいかないだろう。そんなに美人に描かれてないし、少々首をひねりたくなるような髪型であったり、対しておしゃれって感じでない、デザインの入ってない服であったり、少し外しているんだけども、品がいい。フランス映画によくあるようなガチガチのおしゃれではないんだけども、好感が持てる感じ。いたずらであったり、後ろ向きな性格であったり、少し間違えるとうんざりする映画になりかねないところがあるのに、そうならないで済んでるのは、アメリを演じるオドレイ・トトゥの魅力が大きい。やたら目がでかいのがいい感じ。

アメリ [DVD]

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