灰とダイヤモンド

 ドイツが無条件降伏して、ポーランドにおける勢力図の頂点が変わったところで、一般民衆の置かれている状況は変わらない、そんな時代の若者の物語。
 こういう映画を、今という文脈で観ると自戒せざるを得ない。今という時代の日本という平和ボケした状況に置かれているからこそ、外野にいて、能天気に理想主義者していられるけども、この時代にはそれは許されない。常に行動を迫られる。常に選択をしなければならない。理想主義を貫くならばその場で死ぬだけだ。己の存在を信じることも疑うこともなく無に帰すのみだ。
 58年という時の白黒によって光は白くつぶれ、闇は黒くつぶれる、そんなかすれたフィルムだけども、06年の日本で観る意義は大いにあると思う。
 スクリーンに映し出されるマチェクの「普通に生きたいんだ!わかるだろ?」という叫び。クリスチナの「もう行って」と吐き捨てた言葉。逆さにぶら下がったキリスト像。暗殺の背景で打ち上げられる歓喜の花火と嬌声と。その他もろもろからなるこの虚構の世界を通して考えさせられることは誰しもあるんじゃないだろうか。

灰とダイヤモンド [VHS]

灰とダイヤモンド [VHS]