フンデルトヴァッサー展

 彼の作品の面白さは、論理的なところではなく、直感的なところにあるので、ここに言葉で云々してもつまらないし、意味もあまりないだろう。
 直線は神を冒涜するとまで言ったらしい彼の作品は、ごくごく初期を除いていびつと言うかフリーハンドとしか形容のしようがない線と、突飛な色とりどりが配置されることによって構成されていて、見る側としては童心に返って楽しめるようなものなのだが、作り手として彼は自己矛盾に悩みながら作品を生み出していたのではないだろうか。
 まず、彼の行動や作品を見ていて、彼は工業というか、近代化というか、現代の欧米バンザイな風潮が嫌いなんだろうなというのが、ひしひしと伝わってくる(全裸で船に住んでいる映像が、彼の映画に出てくる)。にもかかわらず、彼の思想を具現化するために、建築を衣服に次ぐ人間の第3の皮膚として捉え、近代建築という近代工業の手助けなしには存在し得ないものをつくり始めているというのが矛盾の大一歩である。なにがしかを成すには多少の毒を食らわなければならないのかもしれないけれども、フリーハンドな曲線を、えげつなくならない絶妙なバランスの色彩でもって形成しているような建物の窓が、どこかで見たことがあるような格子が垂直に交わる工業製品ものでは違和感がありまくりである。しかしながら、建築という譲れない機能がいくつもあるようなものに、アンチモダナイゼーション思想が色濃いデザインを施すのは無茶というものなのだろう。しかしながら、ただのオブジェを作っただけでは、人々に受け入れてもらえない。というジレンマに悩まされていたんだろうなあ、と思いながら近代美術館を後にした。ジオラマや絵を見る分にはかなり特殊な世界に触れた楽しさがある。大阪の舞州に行って見たいと思わせるくらい。
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2006/346.html