田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research

 TOTOギャラリー・間にて、田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research。オペラシティのギャラリーで催されている展示と姉妹展示。
 展示スペースが小さいので、どうしてもこじんまりした展示にはなるのだけど、習作をてんこ盛りにした展示になっていて、まあ観に行ってもいいと思います。(無料だし)
jp.toto.com

もしかする未来 工学×デザイン

 新美術館にてもしかする未来 工学×デザイン。個人的には動きをうごかす展の復習。
 個人的に印象に残ったのは3Dプリンタで作製した樹脂製グリップで、さまざまに形状を変えることで、握り心地を変化させたもの。素材はすべて同じなのだけど、形状によっては握った触覚から全然違うものを想像するようなものになっている。固い軽量な樹脂製なのに、ゴムを握っているかのような触覚を錯覚させるものもある。
 ちょうど日経エレクトロニクスの古い号を読んでいるところで、2018年1月号から田中由浩名大教授の触覚技術の連載が始まったところだったので、個人的にはタイムリーだった。
eb.store.nikkei.com
eb.store.nikkei.com

東京大学生産技術研究所70周年記念企画展 もしかする未来 工学×デザイン|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
www.iis.u-tokyo.ac.jp

田根剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ― Digging & Building

 東京オペラシティのアートギャラリーで田根剛の個展。
 結構興味深い展示だった。田根の思想的な面(digging and building)を展示としても触れながら、建築模型も言語的な説明もあって、たっぷりと展示に浸ることができる物量が存在した。
 個人的に印象深かったのは、コンペでの勝ち負けを問わず網羅的に展示された、最後の「数々の挑戦」と題された展示で、作家の軌跡を辿るという目的では、最高の展示だった。
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building|東京オペラシティアートギャラリー
www.cinra.net

沼波弄山翁 生誕三百年 企画展 「萬古焼の粋」

 ばんこの里会館にて萬古焼の企画展 「萬古焼の粋」。
 萬古焼の起こりから、絶え、再興し、現代の萬古焼へとつながっていく様を、いくつかの説明文と焼き物そのもので追っていくという展示。
 結論から言うと、500円で損はしなかったけども物足りなかった。歴史ゾーンは興味深かったしいいとして、現代ゾーンが物足りなかった。基本的な展示思想として、「萬古焼でもこんなんできまっせ」なのであるが、陶器は100円ショップで“Made in China"が多種多様に品ぞろえされ、樹脂容器も種々に生産されている現代において、問題意識が薄すぎると感じた。萬古焼でなければならない理由、他の○○焼ではなく、萬古焼を買わなければならない理由を示してほしかった。
 おそらく国内シェア80%を超える土鍋に代表される耐熱性耐火性になると思うのだけど、そこのアピールと、萬古焼でなければできない製品の協調が必須であろうと感じた。また、現実問題として、やはり土は輸入原料であることを示すのは展示としての最低条件ではないかと感じた。朝鮮製の土を見出したことが、萬古焼の歴史において重要なことだったようだし。(現在はジンバブエ産?南ア産?がほとんどなのかしら)
三重県工業研究所 研究報告 ペタライト含有量を低減させた耐熱陶器素地の開発
ginpo.co.jp


 別件でも写真トップに持ってきてある戦中の金属代用品である萬古焼のガスバーナーはやっぱり印象的ですよね。(展示されています)
www.nikkei.com

banko300.jpn.org

MIHO MUSEUM

 茶杓を軸に据えた企画展と、エジプト・ギリシャ西アジアから中国までを視野に入れた古代美術品のコレクション展。茶杓の方は、その人の興味次第だろうけど、古代美術品はすごい。古代エジプト古代ギリシャペルシャ帝国時代の宝飾品やら美術品やらが割と数多く展示されている。どうやって入手したのというレベル。
 パトロンとして独裁的な宗教が最強なんだろうか。国家についても、結局独裁的な国家が勝利するのだろうか。
百(もも)の手すさび-近代の茶杓と数寄者往来- – MIHO MUSEUM
永遠の至福を求めて – MIHO MUSEUM

新素材研究所・ -新素材×旧素材-

 建築倉庫ミュージアムにて杉本博司の新素材研究所についての企画展。併せて海外で活動する日本人建築家にフォーカスした企画展も。
 モノからコトと言われて久しいが、物語を含んでいるモノの力は衰えていない。天平年間の木材の存在感とそれが置かれてきた場所の歴史、退色しにくくかつ風化しにくい彩りについての試行錯誤の物語、石材が得られるに至る地球物理学・地質学的な物語、そういった物語の説得力がモノ無しに強まりうるだろうか。
 物語を読み解く力と、それを汎用性あることばに言語化する力、そしてあまねく伝える力が求められているのだろう。
bijutsutecho.com
www.axismag.jp

名和晃平Biomatrix

 SCAI THE BATHHOUSE名和晃平の個展。

 私にとって、名和晃平の作品はテクスチャ。今回はベルベット・細かい鉱物・粘調シリコーンオイルのテクスチャ。シリコーンオイルは動的であって、例えば鴨川のほとりに佇み流れを眺めているように、シリコーンオイルのコポコポというリズミカルな動きは見飽きないものであった。

SCAI THE BATHHOUSE | Exhibitions | 現在の企画展 | 名和晃平 Biomatrix

GIRLS

 レナ・ダナムが全身全霊で創った(だろう)GIRLS。プライムビデオにて。エピソード10話ずつのシーズンを6まで観ました。
 よかったよ。登場人物が大体サイコなので、少なくとも初めの方のシーズンでは、誰にも感情移入をすることはない。対岸の火事を眺める感じであったり、物見遊山的な感じであったり、いずれにせよ神の視点から目の前の現実に奮闘する登場人物たちを眺める。大学時代が終わり自分で稼ぐタイミングに差し掛かり、人生の大きな岐路に立つ彼女たちの、主にNYでのセックスライフを全く省かない形での生活が描き出される。ハンナとジェッサは日常的に肉体をスクリーンに晒し、口を開けば日常的にf**kやらvaginaやら叫んでいるので、日本人からするとなかなかに非日常体験ができる。
 作家が女性で、タイトルがGIRLSで、主役が4人のgirlsなので、当然女性による女性のための女性の話である。アダムだかイライジャだかレイだかデジだか、彼らはあくまでも脇役なのである。観客は、彼女たちがかなりゆっくりだが(多少は)mature womenに成長するのを眺めるのである(シーズン6最終話の少女とのエピソードはそういうことだろう)。選択や決断は彼女たち自身によってなされなければならない。男どもが決めたことに女性たちが従う時代ではないのだ。たとえ間違ったとしても、洗濯や決断は彼女たちがすべき、それが貫かれている作品のなんと少ないことか。

 後は雑感
 シーズン5には日本ロケが複数回あるのだけど、女性作家でならでは、初めて自然に女風呂が舞台となるドラマを観たように思う。
 シーズン6のエピソード9がハイライトで、ジェッサとハンナが分かり合えて本当によかった。途中、ハンナ母が、男を奪った同級生が早死にするというフラグを立てていたので、裏切ってくれて本当に良かった。
 脚本はというか作中起こる事件は、シーズン1からシーズン6までずっとハチャメチャなのだけど、演出はシーズンが進むにつれて明らかに巧みになっていて、シーズン6エピソード8のダイナーでのハンナとアダムのシークエンス、セリフなしでお別れするあのシークエンスは今思い出しても、グッとくる素晴らしい出来。

蓮沼執太フィル『アントロポセン -Extinguishers 愛知全方位型』

 蓮沼執太フィル『アントロポセン -Extinguishers 愛知全方位型』
 ライブにはエラーが付きものである。したがって、音そのものとしては、CDの方が優れているだろう。そう考えていた。ライブを体感しても、その考えは変わらなかった。
 しかし、帰りの車中、CD音源を聞き直して、考えを改めた。あのライブには、この音源に存在しないものがちゃんと表現されていた、と。弦楽器・金管楽器・ドラムス・マリンバ・スチールパン、各々が各々のそしてある調和を持ったリズムで旋律を刻む。これはライブでないと感じられないものだった。
 おそらく、フルートを除いてソロパートがあり(スチールパンもなかったかな)、16人それぞれに見せ場があったので、それぞれに個性のある楽器の音そのものを楽しむこともできた。(サックスだけひどい音で、マイクが悪かったのか大谷さんが悪かったのか・・・)
 中でも印象に残ったのは以下2点。
 蓮沼フィルとK-Taさんが、私にマリンバを聞くことのの楽しさと可能性の深さとを教えてくれた。
 石塚周太さんの玄人感に惚れた。

 しかし、何と言っても、この16人を拘束しているんだからね。なんて贅沢な空間だったんだ!
www.hasunumaphil.com