グッバイ、レーニン!というドイツ映画を見た。東西ドイツの統一という出来事を植物状態で過ごしたために経験することができなかった母親。意識が戻ったもののショックを与えるのは厳禁と言われ、息子は隠し続ける…ということから起きるドタバタを描いた映画である。何というか、本人は一生懸命なのが逆におもしろいというような、仕掛けがたくさん埋め込まれていて、笑いのセンスもよくて、おもしろかった。会場の人たちもかなり笑っていたので、一般的にも受ける映画だったようだ。
この映画の象徴となるシーンは題名の示すとおり、まだ自分の立っている土地が社会主義国家東ドイツだと信じている母親の目の前を、レーニン像がヘリに吊られて通り過ぎるシーンだろう。きれいに晴れ渡った青空、地面から屹立する資本主義の象徴とも言える高層ビル、そしてその手前に現れて通り過ぎる金色に輝くレーニン像。あの瞬間の画面をキャプチャーしても、それ自体が作品として成立すると感じた。価値観の崩壊というものが、対比という形を持って、あのシーンに存在していた。
他にも、主人公の青年が、母親に東ドイツが存在していると思わせるために作っているにせニュース番組の「意義」が自分の自慰的な行為にすり替わっていく倒錯の様子も丁寧に書かれているし、音楽も効果的な感じで(少々耳障りな感はあったけども)、見所のたくさんあるおもしろい映画だった。
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