恋はデジャ・ブ

 ビル・マーレイ主演の恋はデジャ・ブ。DVDで。100分ということもあるし、観やすくできてて楽しめた。
 ビル・マーレイ演じる気象予報士フィルは自信家で、地方の天気予報レポーターで終わるような男じゃないと自分では思っている。
 2月2日は毎年、ペンシルベニアはパンクスタウニーという小さな街で行われるwikipedia:グラウンドホッグデーというイベントのレポートを現地で行うことになっているが、パンクスタウニーはド田舎だし、モグラなんかに興味はないし、フィルは全く乗り気じゃない。レポートをさっさと済まして帰ろうとしたが、まさかの猛吹雪でパンクスタウニーにとんぼ返りして、もう1晩過ごした…。
 朝目覚ましで目を覚まし、ラジオに耳を傾けると、聞き覚えのあるラジオDJの会話。窓の外は見覚えのある人出。部屋を出ると昨日と同じ人々とのやりとり。そう、今日はまた2月2日。彼は2月2日を終えると、また6:00の目覚ましで起きて2月2日をやり直すループの世界に入り込んでしまったのだ。彼だけが過去の記憶を維持し、彼以外の外部は全て、まっさらな2月2日を迎えている。そんな世界。
 フィルは2月2日の連続を楽しんだり絶望したりする。40を越えた歳を気にせず、タバコと甘いものとをたらふくいただいてみる。グラウンドホッグデーのレポート番組のプロデューサー、リタを口説き落とそうとしてみる。失敗したら次の日はそこを修正して、何度も何度もチャレンジしてみる。無謀運転をしてカーチェイスして、牢屋に放り込まれてみる。ナンシーに話しかけて出身校の話しを聞き出しておいて、次の日にそのことで同級生を装ってセックスしてみる。現金輸送車の周りの出来事を記憶しておいて、次の日に現金をカバンいっぱい盗んでみる。グラウンドホッグを盗んでみる。感電から飛び降りから、ありとあらゆる自殺を試してみる。でも何をしても、気付いたら2月2日6:00の目覚ましで目を覚ます。
 フィルは誰とも共有できないこの気持ちを、ある2月2日にリタに打ち明ける、周りの誰も彼もの何もかもを知っていることをリタに示し、2月2日ループは本当なんだと語りかける。そして、

フィル:もっと悲しいのは…明日になると君はこの事を全部忘れてる。僕に冷たい顔。あきらめたよ。
リタ:死んでも必ず甦るんでしょ?決して悪いことじゃないわ。前向きに考えるのよ。
フィル:君は前向きだな。

このやりとりを境にフィルは前向きに2月2日を生きるようになる。
 周りの人にいいことをしてみる。ホームレスの老人に持ち金全部渡してみる。人当たりよく接してみる。ピアノを習ってみる。氷彫刻にチャレンジしてみる。無限に習って練習することができるので、なんだかんだで上達する。ホームレスの老人が2月2日に無くなる運命だと知って、彼が亡くならないようにありとあらゆることをしてみる。でも、どうしても彼は救えないようだと悟る。
 その後は変えられることを変えるようになる。2月2日の午後に木から落ちる少年を拾って救う。2月2日にパンクする車を修理する。2月2日に喉に肉を詰まらせる中年を救う。結婚を言い出せないカップルを焚きつけて結婚を決めさせる。グラウンドホッグデー後のパーティを盛り上げる。
 ここで初めて世界が変わる。2月3日が訪れる。というお話。

 フィルの心持ちを変える出来事があっさりと描かれているので、最初観たときには、フィルがなぜ善人に変わってしまったのか、そこがさっぱりわからなかった。むしろ私個人としては、何が人を変えるのかに興味があって、それが気になるところだったから。観直してみると、フィルを変えたのは「愛」そのもので、それはリタに対する愛であると端的に描かれているし、おそらく世界に対する愛、肯定感のようなものでもあるのだろう。そこを詳しく描いて欲しいと思うのだけども、描いたら野暮だとも思うのです。

恋はデジャ・ブ [DVD]

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