一生を誓った人間と一緒に生活もできない人生に意味があるのか考えちゃうよね。
技術者をやっているけど、私がこの仕事をやらなくても後輩や中韓がおそらく同等にもしくはより良くやり遂げてくれるだろうし、それだったら自分は誰もやらないようなことをして、慎ましくも幸せな生活を探しに行った方がいいのかなと、そんなことを考えています。
夏目漱石の妻
永い言い訳
早い話、演出の失敗だと思う。役者の表情に頼るシーンが多いのに、役者の表情から放たれる情報が少ないと、そう感じた。
以下、これは・・・シーン
- 竹原ピストル演じる大宮と周りのやり取りは、おそらく“大宮は何気なく振る舞っているのに、周囲には怖がられてしまう”という表現をすべきなのに、竹原ピストルが普通に凄んでしまっている。何度か。
- トレーラー等によく使われている、残された大宮家と幸夫で砂浜で遊ぶシークエンスで、想像上の夏子が戯れるという表現はくどい。浜辺に戯れる家族・前後のやり取り・海を見つめる幸夫、の3点セットで十分表現したいことは表現できているはずで、あそこで夏子が現れるのは単純にくどい。
- 大宮家と幸夫の関係が終わる直前の、夏の終わり・死にそうなセミ(宇野常寛言うところのセミファイナル)・シャボン玉、というあんまりに安直でこれ見よがしなメタファーはくどい。やり過ぎ。
他にもあったけど忘れた。
西川美和は、小説家に寄ってしまったのではないだろうか。公式パンフレットに、永井言い訳は映画化を前提というくびきを外して、書きたいように小説を書いたというようなことが書いてあったが、それはつまり小説家としての才能の方が、映画作家としての西川美和の才能を超えてしまったのではないかと、そう思ったのです。
おとぎ話みたい
山戸結希のおとぎ話みたい。下手くそだなと思いながら観ていて、惹き込まれてしまった。
一緒に入っているCOSMOSも魅力的にバレエが撮られていて、心奪われた。おそらく作家本人は長回しを撮ってみたかっただけなのだろうけど、心奪われたのは事実。
おとぎ話みたい ~LIVE FOREVER Ver.~ [DVD]
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2016/11/02
- メディア: DVD
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函館珈琲
西尾孔志監督の函館珈琲。ユーロスペースで。
回復の物語。書けなくなった小説家の再生の物語。駆け出しの職人・アーティストが軒を連ねる翡翠館というユートピアでの、我が子を捨てたガラス職人・かつていじめられていたテディベア職人・対人恐怖症(?)のピンホールカメラ写真家との交流を通じた、小説家が自分を取り戻すまでの物語。
個人的には函館はラッキーピエロとハセガワストアの街なので、ラッキーピエロがチョイだし、ハセガワストアが映らないようでは、函館である必然性が伝わってこなかった。
片岡礼子を久し振りに観たということ、Azumiって人の魅力に触れたこと、そういう細部には心ひかれる部分があったものの、トータルの映画としてはおもしろくはなかった。
- 椅子は海辺で見つかってからの伏線回収は??
- 対人恐怖症になった経緯は??
- 子どもの名前と藍・青へのこだわりって安易に過ぎないか??
- books & coffeeって何かの結論になりうるの??
- 英二の新作はどうなったの??
などなど気になって乗れない脚本だった。
p.s.いいから早くソウル・フラワー・トレインをDVD化してほしい。
ロッキー
初めて観た。DVDで。
シンプルなプロット。いくつかの印象的なシーン。ハマる理由がわかる映画だった。
アニッシュ・カプーア個展
SCAI THE BATHHOUSEに行き、アニッシュ・カプーア展。
これは素晴らしかった。この作家を意識したことはこれまでなかったのだけど、たぶん今までに金沢などで作品は見てきたはず。
最も心を奪われたのは最も手前に展示してあった、串を抜いた団子みたいな形をしたSUS?の球みたいなオブジェ。外も内も鏡面仕上げをしてあるので、外も内もその表面全てで鏡のように展示室や自分自身が映る。エッジも繊細に鋭く鏡面仕上げをされているので、内側はおそらく独立した3つの曲面で構成されているはずなのだけど、その曲面と曲面の間の境界も繊細に鋭く鏡面仕上げをされているので、目を凝らしてみてもどこに境界があるのか判別できない。自分の視覚がおかしくなったかのような体験をすることができた。
次に心奪われたのは、これも鏡面仕上げのSUSの球が展示室の隅っこの壁と壁のL字部分に埋め込まれたようなオブジェ。一目見たときには上記のようなシルエット(壁とオブジェの境界)を認識するのだけど、徐々に近寄って見てみると鏡面仕上げの金属球ではあり得ない反射をしていることに気づき、オブジェ至近まで近寄ると実は2つオブジェの集合でできていることに気づく。上のオブジェと同様に、2つのオブジェは寸分の狂いなく接着されており(表面の色から判断するに溶接されている)、またエッジまで繊細に鏡面仕上げされているために一見2つのオブジェで構成されていることに気づかない。従って、オブジェに近寄っていった時に自分の視覚が揺らぐ経験をすることができる。
その他、極限までなめらかに傾斜をつけられたグラデーション塗装(黒to灰)がなされた円盤であるとか、黒に薄く塗装された(おそらく)放物線鏡面による天地左右逆転鏡など、視覚を揺さぶる作品と、さらに習作なのかペインティングや模型が展示されていた。
上述のように、2つの金属製オブジェは私の好奇心を極めて刺激してくれた。
君の名は
新海誠の君の名は。劇場で。観ようとした回が中高生ぐらいで劇場が満たされるくらいの混雑だったんだけど、課外授業ですか?
脚本が幼い。それが観終わった第一印象。いや泣けるんですよ、RADWIMPSガンガンにかけてくるし、堤幸彦を超えるレベルで情景大回転させてくれるんで。*1
でもさ、1分1秒が貴重でない、何度でも黄昏時に訪れることのできる瀧くんは大事な目的忘れていちゃついてりゃいいんですけど、今の1分1秒でセカイの破滅を担っている三葉が、同級生を犯罪者にしたり面倒ごとに巻き込んでおいてたらたらしてんじゃねーよボケって話ですよ。
んでタイトルにもなる大事な大事な君の名を忘れないようにお互いに手のひらに書こうって時に、時間切れで書ききれなかった三葉はしょうがないものの、瀧くんはどれくらい知能指数が低いのか、名前じゃなくて書いたのが「すきだ」じゃねーよボケって話でしょ!?
最も重要な、最も緊張感を高めて高めておいての、この弛緩しきった脚本、これはびっくりして、正直笑いました。脚本は合作にしたほうがいいと思います、新海監督。
劇場で観る価値のある劇映画ではあったものの、そこが不満。
冒頭の実写かと見まがうような異様に精細なアニメと、確かに実写では不可能なカメラワークには心奪われました。でも、ン十年生きてきて、汚れきった私には、あの最も重要なシークエンスでの脚本のクズっぷりには耐えられませんでした。
繰り返しますが、劇場で観る価値はあるというのが私の意見です。
www.kiminona.com