笑う蛙

 笑う蛙という映画を見た。最近見た映画がほとんど学生の自主制作映画だっただけあって、脚本がしっかりあり、カメラワークも理にかなっていて、演技を生業にしている人たちが出演している商業映画は逆に新鮮だった。
 主役である夫役の長塚京三、妻役の大塚寧々ももちろんはまり役で、設定されているキャラによく合っていたが、周りを固めるきたろうや南果歩もはまり役ですごく配役のうまい映画だなと思った。
 内容的にはマルコヴィッチの穴に通じる「覗き」の楽しさや淫靡さ、そして見つからないようにしなければならない苦しさなどがあり、また、要所要所で小ネタをはさみ、というような作品だった。全体的に物語が小気味いいテンポで展開されるので、最後まで見せられてしまった。そういう意味で時間を感じさせない映画だった。
 ところで、タイトルの笑う蛙だが、何のメタファなのかがイマイチ分からなかった。映画のところどころで蛙が鳴く(笑う?)シーンがあり、僕の印象では主人公の夫の心のメタファかなと思ったのだが、詳しくは分からなかった。監督はしっかりとヒントを提示してくれていたのだが僕が読み取れなかったのだろう。かなり残念だった。
 物語の終わらせ方は個人的には好きな感じだった。予想を2重3重に裏切ってくれ、しかもある意味で物語は終わらない、これで終わりではなく、ここからも物語は続いていくんだという、作り手の意図を感じた。映画は体裁としてここで終わるけど、中に息づいている物語は終わらないんだという、言い方がおかしいが、このあとは鑑賞者の側に丸投げしますというような意図を感じた。

笑う蛙 [DVD]

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