硫黄島からの手紙

 いい映画だと思った。女房が亭主にタメ口をきいてみたり、といった些細な間違いはある。もちろん歴史に詳しい人からしたら史実的な誤りはあるのだろうけど、その指摘はこの映画にとって本質的でないと思う。それくらい懐が広い作品だった。
 そして、下らないことだけども、こういう映画をアメリカ人監督に、アメリカの資本で撮られてしまううちは、日本という国は「美しい国」とやらに程遠いのではないかと感じた。影の薄い(もちろん確信犯的なのかもしれないが)政治家が著した「美しい国へ」という本には目も通していないので、「美しい国」の定義は推測するしかないのだが、国民が自分が生かされている環境に感謝することなしに国家が美しい国であることは不可能だと、僕は考える。多くの日本国民は唯一神教徒ではないので、環境を与えられている感覚や、生かされている感覚が他国民に比べて、直感的に得がたいのはなんとなくわかるが、それにしても、例えばこの映画に描かれる今生きる我々を(間接的にでも)守ろうとした人々に対して敬意を払ったりする意識が希薄なことを自分を含めてだが、感じる。いや、この映画に描かれた人々が皆、積極的に守ろうとしたわけではないが、今の日本を今の日本たらしめるために犠牲になった人々であるとは言えるだろう。靖国問題などは他国が絡む複雑でデリケートな問題であるが、この映画に描かれた人々と想うとき、思うところは人それぞれあるのではないだろうか。
 そう考えたとき、やはりこういう映画を撮られていることは悔しさすら感じる。
 そして、我ながら駄文で気持ちいい。
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/