アメリカの夜

 阿部和重のデビュー作であるアメリカの夜を読み終えた。
 彼らしい説明的な文体(蓮實の文章を読んだことが無いので分からないが、彼の影響を受けている?)、回りくどく説明しているように見えて、それ自体で綴られていく小説であり、彼のこの作品後の方向性が存分に示されている、彼らしい作品である。
 やはりその文体が災いして、最初は?が続いたりもしたが、読了してみれば、その文体が必要だということがわかる。彼の文章はよく「映画的」、「映像的」と評されるが、確かに描写が巧みな気はする。が、それは最初に彼の文章は映像的だという評が頭に入っているからバイアスがかかっているような気がしないでもない。シナリオ、というものを読んだことが無いので分からないのだが、それに似ているのだろうか?題名にトリュフォーの映画のタイトルを使うことにも表されているように、映画というものがテーマなのは間違いないのだが。
 ストーリーは、最後のシーンが最高におもしろい、150ページも読んだ甲斐があったってくらいのネタが用意されている。主人公唯生の暴れっぷりが圧倒的におもしろくて、電車で読んでてちょっと恥ずかしかった。

アメリカの夜 (講談社文庫)

アメリカの夜 (講談社文庫)