水没の前に

 山形ドキュメンタリー映画祭2005のグランプリ、しかも佐藤真も好評価なみたいなので、同志社まで赴いて観てきた。
 なるほど確かに、マスメディアというフィルターを通して見た中国とは一味も二味も違う、生活者たる中国人たちが、強い生々しさをもってフレームに収められていた。中国人の視点から捉えられる中国という場がスクリーンに再現されていた。うらぶれた民宿を営むうらぶれた男。長江で荷役を行い日銭を稼ぐ肉体労働者たち。愛嬌もなく胡散臭い牧師。三峡ダムの完成によって川底に沈む奉節の人々をカメラは無機的に追いかける。人が生きているという現象を素晴らしくリアルに再現していることは評価に値するし、監督の才能を端的にあらわしている。
 しかしながら、この作品は2時間半もあるのだが、その時間を支えるだけの面白さ(funの方)に欠ける。興味深い映像の連なりであるのだが、何かつまらない、のか長いのか、とにかく2時間半耐えるのは少々苦痛だった。
 ただし、そのリアルさというか映像の裏路地的な空気は素晴らしく、1時間くらいにしてくれたらな、と思う。現在の日本において、この作品を通してリアルな中国に触れるという体験は意義深いんじゃないかな。そういう意味では村上龍のメルマガの『大陸の風−現地メディアに見る中国社会』も結構面白いと思う。村上龍ってのがちょっと(イヤかなり)いけ好かないけど(笑)
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