王国(あるいはその家について)

 草野なつか監督、王国(あるいはその家について)。パリのシネマテークフランセーズの配信プラットフォーム「HENRI」にて。
 恵比寿映像祭で見逃してから気になっていたのだが、ついに観ることが叶った。
 あらすじはCINRAで書かれている通り。

出版社の仕事を休職中の亜希、小学校から大学までを亜希と一緒に過ごしてきた幼なじみの野土香と、野土香の夫・直人を巡る物語だ。
https://www.cinra.net/news/20190801-oukoku

 物語としては、亜希が直人・野土香夫妻の娘を台風の日に殺したというそれだけ。150分ほど上映時間があるのだが、観客は繰り返し繰り返し、稽古やリハーサルの様を見せられる。カットを差し挟みながら、椅子に座ってテーブルに向かい台本を朗読するところを広角で撮った映像から、最終作品の映画(映画とは?)のように寄りで撮った映像までを見せられる。最初よくわからず集中力が途切れてしまったが、作り手の意図が分かってからはむしろ画面を注視することになった。
 従って、演者が「素」の自分から役に入る瞬間というか推移を見ることもできれば、同じシークエンスが探り探りの台本読みから最終演技までの変化も見ることができる。また、最終作品の映画?の場面が例え寄りであって画面外の事物がたくさんある状況でも、そこに何があるのかありありと思い浮かべることもできる。
 そして、タイトルの王国、最後に何かが分かった。王国とは暗号回線のことであり、王国とは家族のことであり、また同時に王国とはこの虚構の「お約束」を共有している仲間としての映画とその観客であったりもするのだろう。
https://cinematheque.fr/henri/