これは1カット90分、すなわちソクーロフ自身がカメラを1台担いで、一度も止めることなく撮影してしまった作品である。舞台はサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館。この作品は、美術館に迷い込んでしまったある時代の一人のフランス人外交官を追いながら、ある人間の視点で綴られるものであり、時間軸の歪んだ美術館の中でいくつもの時代を行き来する。この作品も何と言っていいのかわからない。完結した物語であり、見た人だけが共感しあえるような寓話だ。視点がある人間の視点であり、1度もカットを入れていないことによって、見ている人間が、自分が主人公であると錯覚することができるのだ。そういう意味ではこの作品は物語でなく現実となる(やっぱりうまく言えてないけど)。
ただ、この作品は見事に現実らしく、眠い。映像はとんでもなく美しいし、見事な美術品(エルミタージュ美術館で撮影しているので、美術館所蔵の美術品がどんどこ出てくる)もたくさん見れるのだけど。現実は、やっぱり休み無く寝る暇もないもの、ではないようだ。
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