メゾン・ド・ヒミコ

 2時間を越える作品なのに、飽きることなく全部観切ることができて、犬童一心のストーリーづくりの上手さには毎度脱帽なのだけれども、観終わった余韻が残らなかった。ガツンと来ないというか、感触が残ってなかった。大概、僕は映画を観終わった後に反芻するのだけれど、この映画についてはそれをすることができなかった。それどころか、これを書こうと思い出すのがかなり困難を極めている。
 細部というか個々の演出や演技は素晴らしいと思うのだ。オダギリジョー演じる春彦と柴咲コウ演じる沙織のセックス未遂シーンなどは本当にエロスに欠けていて素晴らしいし、田中泯(というおっさん)の抑制の効いていて、じらされるような独特のテンポやタイミングを持った演技もホントに素晴らしい。高さというのを強く意識したカメラワークも楽し気だし、物語に登場するメゾン・ド・ヒミコと細川塗装という2つの舞台での色彩の使い分けも秀逸だったと思う。しかし一つの作品としてみた時に、途中に挿し挟まれるオチであったり(ジョゼと虎と魚たちでもそうだった)、やや冗長に続くダンスのシーンであったりが機能していないように思えてしまう。そのためにフィクションの面白さであったり、興味深さであったりに欠けていて、単なる「いい話」、物語の域を抜け出ていないように感じる。ダンスについてはただ単純に面白くないだけかも知れないけど。
 しかし柴咲コウは怒った顔か泣き顔じゃないと映えないなあ。田中泯っておっさんはただ者じゃない雰囲気が漂っていて、かなり飲み込まれた。くりいむレモンを観てすぐにまた村石千春なんていうマニアック女優(?)を見るとは。。。好みじゃないけど。

メゾン・ド・ヒミコ 通常版 [DVD]

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