リボーンアート・フェスティバル 東京展

 ワタリウム美術館で。やっぱりぐっとくるものがある。
 島袋道浩の作品、「起こす」の方はふーんと思っただけだったのだけど、「起きる」の方を見て、泣きそうになった。「起こす」は島袋らが浜辺に横たわっている木や石を立てたインスタレーション。「起きる」の方は津波になぎ倒された若木が、90度に幹を曲げて伸びている作品。
 もう一つ、金氏徹平のWhite Discharge(建物のようにつみあげたもの/石巻)。私くらい歳を取ってくると、積み上げられた材料たちの持っている(持っていた?)物語に思いを馳せてしまう。感極まってしまうよ。
リボーンアート・フェスティバル東京展、reborn art festivalin Tokyo

世界にひとつのプレイブック

 世界にひとつのプレイブックを一人寂しく観直してみたのですが、脚本けっこう狂ってんな。いや、好きなんだけど。褒めているんだけど。でも、プロットが結構むちゃくちゃだわ(笑)

 なんでこの時べた褒めだったんだろう(笑)
creep.hatenadiary.jp

剥き出しにっぽん

 石井裕也監督の大阪芸大卒業制作作品、剥き出しにっぽん。DVDで。
 これはなかなかすごい。中盤から最後まで、グダる感は否めないのだけど、導入から話の展開までは、俊逸に面白い(学生映画としてはかもしれないけども)。
 男子高校生的なホモソーシャルなネタ感と、謎に背中から尻までのサービスショットまで、(学生時代の)石井裕也の考える「映画の面白さ」が90分に詰まっている。
 セリフの録音はかなり小さいので、DVD化するときにどうにかならなかったのかしらとは思う。
反逆次郎の恋に繋がるモチーフ(なんか知らないけど同棲しちゃうとか、宇宙に対する態度とか)がちょいちょい出てきて、反逆次郎の恋の理解度向上にも貢献した。

剥き出しにっぽん [DVD]

剥き出しにっぽん [DVD]

東京の恋人

 笠井爾示写真展を渋谷ヒカリエ8階にて。写真って、もはやプロでもそこそこの光沢紙にインクジェットでプリントアウトして作品にする昨今、プロの撮る写真とはいったい何なのか、考えさせられた。解像度ではない。
www.hikarie8.com

硝子の葦

 WOWOWのドラマ、三島有紀子監督、プライムビデオで。全4話。
 1話目、辛かった。誰にも感情移入できない。世界が釧璃(釧路のもじり)に閉じている。グロい。本当に2話目を観るべきか迷った。半分以上惰性で2話目を観た。素晴らしかった。
 相武紗季演じる主人公、節子が、初めて笑った。世界の景色が明るくなった。閉じた世界が、人間の内側に開いていった。普遍性を持つ物語に転化されていった。

 正直プロットを思い出してみると、2時間不要で90分でまとめられる内容のように思う。それを4時間たっぷり使って風景の描写を差し挟みながら描き出した。でも、それだけの価値はあったように思う。
 1話目は恋の渦の冒頭30分並みに辛いのだけど、2話目以降花開くので、ぜひぜひ観てみるべきと思う。ググってみても全然、批評・レビューの類がない。正直観られていないドラマなのだろう。でも、三島有紀子渾身の一作なんじゃないかと思う。
 
 3話目、部屋の家具の位置が変わっていることに気づいたあなた、鋭いです。それくらい鋭い人には、4話目の描写はくどいですね。説明過剰に感じると思います。私は、ラストから2番目のシークエンスは、タバコの持ち方だけで説明するのが乙だと思います。ピアスは過剰。

の・ようなもの

 森田芳光監督、の・ようなもの。プライムビデオで。
 二ツ目の志ん魚がソープ(81年の作品なのでトルコ風呂)行って姫と仲良くなったり、高校に落語講師として関わるうちに女子高生とつき合ったり、そのくせ噺がおもしろくなくて行き詰まりを感じたり、そんな姿を描き出す。まあ、プロットが特におもしろくないので、そこの点では見る価値はないだろう。
 この映画の現代における価値は、間違いなく、80年代当初の風俗(性風俗だけでなく)が切り取られ、映し出されていること。主に男性文化のみですが。

の・ようなもの [DVD]

の・ようなもの [DVD]

レアンドロ・エルリッヒ展

 森美術館。これは、、、おもしろくなかった。
 もともと「なるほど」の種明かしな作家で、即物的なことを批判してもしょうがないんだけど、それにしても思想的な深みが薄すぎませんかという印象を持った。個展の割に作品数が少ないせいかもしれませんが。(まあ展示が場所を取る作家なのでしょうがないとも言えるんでしょう)
 現代アートの入り口にはいいのかもしれないけれども、「インスタ映えするでしょうね」以上の感想が浮かんでこない。そんな展示。
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www.mori.art.museum

装飾は流転する

 東京都庭園美術館で。装飾とは?という問いに作品でもって答える企画。これはなかなかにフェティッシュで興味深かった。
 ヴィム・デルヴォワのSUS板をレーザーで鋭角に繊細に切り抜いたものを組み立てた一連の作品群に特に興味を持った。特にトレーラーはタイヤが回転するように製作されていたので、動くところを見たかったというのが正直なところ。
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 また、高田安規子・政子による作品で、樹脂吸盤の彫刻やトラップに刺繍を施した作品もきわめてフェティッシュで心をくすぐられた。
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www.teien-art-museum.ne.jp

フリンジマン

 Amazonプライムビデオで。
 板尾創路がはまり役。表情一つ変えずに、愛人教授と書いてラマンプロフェッサーと読むクズ井伏を的確に演じている。(原作は未読)
 既婚セックスレスの田斉、野球バカの満島、女性不信の坂口。この3人が愛人をつくるために格闘する様を描く。8話までで対象になるのは、田斉の同僚山口詠美(筧美和子)、満島の行きつけキャバクラのキャバ嬢江口カオリ(岸明日香)、満島が飲み会で知り合った川上ミエ(佐津川愛美)。2人は明確におっぱい要員として、深夜ドラマ感をしっかりと出してくる。
 1話が30分で見やすいし、嫌いじゃないよ、この感じ。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

 岩井俊二の若かりし頃の映像をプライムビデオにて。
 確かに、小学生の世界をよく捉えられているし、よく伝わってきた。低い視点の映像、限られた舞台、限られた想像力や閉じた世界観。“東京”とか“大阪”は確かに線路の先にあるはずなのだけど、どこか現実感のない空虚な言葉として表現されている。
 年老いた大人たちの、記憶の片隅をくすぐりまくる。
 でもコレが、オールタイムベストだっていうのは、幼稚なのではと感じます。太宰がオールタイムベストっていう人と同じカテゴリーかな。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]